2010年09月05日

「中国人が日本の森を買い漁る」という都市伝説

米国のSnopes.com (http://snopes.com)
アメリカ人なら知らない人はいないほど有名なサイトで、
米国の「都市伝説」とその真偽を大量に列挙しています。

もしこのサイトが日本にあるなら
取り上げられる可能性が高いのが、
「最近、中国人が日本の森を買い漁っている」という
ウワサです。

単なる噂ならまだ良かったのですが、それを
産経新聞(今年3月29日付け)
日本経済新聞(今年6月26日付け)
など大手メディアまでが
取り上げてしまったのだから、始末が悪いのです。

産経新聞の記事は、
「日本の森と水 むさぼる外資」と題し、
「全国各地の水源に近い山林について、中国などの
外国資本が買収の打診をしてきていることが東京財団が
まとめた調査報告書で明らかになった――と報じています。

どうやら、出所は東京財団の政策提言
『日本の水源林の危機』〜グローバル資本の参入から
「森と水の循環を守るには」〜 のようです。
http://www.tkfd.or.jp/topics/detail.php?id=118

この提言のプロジェクトリーダーは
『奪われる日本の森―外資が水資源を狙っている―』
という本を出しています。

版元である新潮社のサイトには、
下記のような刺激的なコピーが並んでいます。
http://www.shinchosha.co.jp/book/323741/

◆このままでは、日本の国土全体が中国人や欧米人のものに
 なってしまう!?
◆価格が暴落した山林の売買取引が活発化している背後には、
 今後の世界的な水資源争奪戦を見越しての水源林獲得
 という狙いが見え隠れする。
◆ルール整備のなされていない今のままでは国土は簡単に
 グローバル資本によって買い占められる。生命の源の危機が
 日本人の喉元にまで及んでいる


これらの記事や書籍の論理展開は、
1)中国人が日本の森林を買収しにやってきたという話がある
2)中国では水不足が深刻であり、水源の確保が急務である
3)よって、中国人は水資源を確保するために、日本の森を
  狙っている。
――という極めて単純な三段論法です。

だが、本当にそうなのでしょうか。

筆者(オルタナ森)は真偽を確かめるために、
全国森林組合連合会(全森連)の幹部に会ったときに、
問い合わせをしたところ、下記のような答えを頂きました。

「全森連も同様の噂を聞いたため、全国の森林組合を
通じて調査しました。しかし、そのような事実は一件も
出てきませんでした」

林野庁広報室も、この種の噂を完全に否定していました。

東京財団のレポートも産経新聞も、明確に中国人が
日本の森を買ったという事実を、一件もつかんでいません。

これらの記事は、少なくとも、「裏が取れている」情報では
ないようです。

そもそも、中国が必要としている「水」の大半は
農業用水と工業用水であり、ペットボトルを一生懸命
つくって中国に輸出しようという、そんな可愛いレベルの
ものではありません。

農業用水や工業用水のような規模の水は、
海外から、船を使って輸入しても
到底、採算が合わないのです。

仮に、中国が日本の水源林を確保したとしても、
日本からの水輸出を禁止するか、輸出に高関税を
課す法律をつくるだけで予防措置は取れます。

私は、これらの噂が、必要以上に中国を脅威だと
煽り立てる、質が良くない「都市伝説」であることを
とても危惧します。

私自身は中国人の友人はほとんどおらず、
とても「親中」と呼んで頂けるような存在ではありません。

しかし、最近の中国の経済力や技術力を正当に評価する
ことなく、「何をするか分からない国」としか見ずに、
思考停止してしまう、今の日本の言論を非常に危惧します。

むしろ、問題は私たちにあるのです。

全国森林組合連合会(全森連)の幹部の方は、このようにも
言及していました。

「おそらく、今のように日本の森林が放置されている状況では、
いつ中国が買いに来てもおかしくないという懸念が、噂として
広がったのでしょう」

日本の木材自給率は24%しかありません。
食料自給率より遥かに低いのです。

消費者も住宅メーカーも家具メーカーも、
もっと国産材に目を向けるべきです。

しかも、水源林が狙われていると騒ぐ割には、
日本の水道水には見向きもせずに、海外からの
ペットボトルの水をガブガブ飲んでいる――
まさに本末転倒です。

東京財団のレポートでは、水道インフラ(水道局)を
民営化して、欧米など海外の事業者に委ねる危険性も
指摘しています。

しかし、東京都などの自治体がアジアやアフリカでの
水道インフラ事業に乗り出す中で、
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100615/231601/
「日本は進出したいけど、海外企業に水道は任せたくない」
というのはエゴではないでしょうか。

このように、「日本の水源林」を巡っては、
普段の関心が非常に少ないにも関わらず、
根拠がない噂が飛び交う、という非常に
不幸な状況が続いています。

都市伝説でもなんでも、話の種になるだけでも
良しとしなければならないのでしょうか。









posted by setsumo at 17:45| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>私自身は中国人の友人はほとんどおらず、

実際に見て聞いていないのに、論じるのは若干危険じゃないでしょうか。
現地に触れることでわかる危険性もありますよ。
良い部分もあるけど・・・悪い部分もあります。

>しかし、東京都などの自治体がアジアやアフリカでの
>水道インフラ事業に乗り出す中で、
>http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100615/231601/
>「日本は進出したいけど、海外企業に水道は任せたくない」
>というのはエゴではないでしょうか。

中国人が水を狙ってるか狙ってないかはわかりませんが、自国のインフラを自国の企業が管理することのどこがエゴなんでしょうか?
Posted by 雪 at 2010年09月05日 19:08
私自身真偽のほどは分かりませんが、こんなニュースもあるようですから、「事実」に「憶測」が結びついてしまったのかもしれませんね。

「東京財団の政策提言」のプロジェクトリーダーにも話を聞いてみたいところです。

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金持ち中国人の「不動産購入ブーム」 都内の高級マンション、北海道別荘
http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20100712/JCast_70621.html

2008年に大ヒットした中国映画の舞台になった北海道も人気が高い。

家具・インテリア販売大手、ニトリの子会社、ニトリパブリック(札幌市)は千歳市に中国人富裕層向けの別荘地を建設中で、2010年7月中に完成する。ニトリの家具、インテリア付きで、土地を含め3000万円台で、17棟すべてが完売した。同社の別荘事業開発担当者によると、さらに100人ほどから引き合いがあり、第2期の建設計画が進んでいる。

Posted by 柳田 at 2010年09月06日 06:14
都市伝説と一刀両断にされる論調は、恰好が良いとは思いますが、今日の朝日新聞のグローブの記事には、6月の北海道議会の道幹部の答弁で海外企業が北海道の山林を購入していることを明らかにしていること、また朝日新聞の香港スタッフが裏を取っていることが書かれていました。
もうすこし足で歩かれて記事にされないと読者は
戸惑います。
Posted by 山田 at 2010年09月06日 23:30
山田さま、書き込み有難うございました。
 朝日グローブの記事を拝見しましたが、単に、外国人が北海道の森林を買っただけですね。これが、なぜ、水資源の収奪と結びつくのでしょうか。この論理展開では、まだまだ「都市伝説」の域を出ませんね。
 さらに、これがなぜ、「土地収奪」という大げさな見出しになるのか、まったく理解できません(笑)。
Posted by オルタナ森 at 2010年09月07日 02:15
Globeの記事はこれ↓ですね。

北海道の森林が香港の資本に買われた。
買い手は? 目的は?
http://globe.asahi.com/feature/100906/01_1.html

確かに、この記事だけでは土地買収の目的は何とも判断がつきません。

「見知らぬ外国人に買収された水源地がどう使われるか、将来的にどんな影響があるか漠然とした不安を抱く人が多い」ということくらいは言えそうです。
Posted by 柳田 at 2010年09月07日 10:06
結局買われてる現実
Posted by 青森人 at 2012年11月06日 11:48
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「日本の森林が中国人に買われていく」?!ええ話じゃないですか、ばんばん売ったれ―「クローズアップ現代」
Excerpt: 昨日の「クローズアップ現代」、見ました?日本の森林が買われていくこの夏、北海道倶知安町の山林が香港企業によって密かに買収されていたことが判明。買収劇の周辺取材を進めると、...
Weblog: Kinbricks Now
Tracked: 2010-09-08 16:03
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