2009年12月31日

CSRを巡る7つの誤解(オルタナ3号記事から)

CSRは何か――を正確にとらえるのは容易ではない。「日本の学者や経営者、コンサルタントにもCSRの本質を誤解している人が少なくない」と指摘する、一橋大学大学院商学研究科の谷本寛治教授に、CSRを巡る誤解を聞いた。

本文)
1)CSRは企業の問題である――×
 CSRは一見、企業だけの問題に見えるが、実は私たち自身の問題でもある。消費者として、NPO(特定非営利活動法人)やNGO(非政府団体)として、企業活動にかかわる社会・環境問題について関心をもっているか。消費者・市民である私たちや、行政、社会が変わらなければ、企業行動は変えられない。とりわけ私たちが、企業を厳しく冷静な目で見ることができるかが問われている。
2)CSRは社会のニーズから生まれた――×
 ナイキやウォルマートなどのようにスウェット・ショップ問題でNGOから批判を浴びた企業がCSRに動いた米国や、政府主導でCSRにまつわる規制が強化された欧州と違い、日本ではグローバル企業が先行する形で、CSRが移入された。日本のCSRの議論は米欧と違い、市民運動や消費者からの要求で生まれたとは言えない。日本ではもっとCSRについての社会のニーズを明確にすべきである。
3)CSRはコンプライアンス(法令順守)を超えたところにある――×
 「企業にとってコンプライアンスは当たり前で、CSRはそれを超えたところにあるものだ」との論があるが、そうではない。コンプライアンスは法令順守やリスク管理という「守りのCSR」であり、それぞれの課題に積極的に取り組み、新たな社会的価値を創造していくという「責めのCSR」のレベルがある。
4)本業を通じてCSRをやるのが正しい――×
 社会的課題に本業を通して対応することは大切であるが、それがCSRの中核だというわけではない。その前に問われることは、コンプライアンスから始まって、企業経営のあり方そのものである。公平性、倫理性、社会性、環境や人権など日常の経営理念の哲学によって問われるべきものなのである。
5)CSRでは企業の「道徳」が問われている――×
 CSRだの、コンプライアンスだの制度をつくっても、業績など評価のモノサシが変わらなければ社員は動かない。相変わらず売上高重視、コスト削減重視の中でCSRと言われても、社員は「手足を縛って泳げ」と言われているようなものだ。経営者は、仕事の評価の基準を考え直すべきだ。例えば、保険金の不払い不祥事が頻発した保険会社で、「仮に成約率が伸びなくても、解約率が下がれば社員を評価する」−−と評価基準を変えることができるかどうかがポイントとなるだろう。
6)CSRを世に喧伝するのは「陰徳」の文化になじまない――×
 朱子学には「陰徳あれば陽報あり」という言葉がある。何か素晴らしいことは人に隠れてやるべきだ、そうすれば必ず報われる、逆に隠れてやらないと価値がない――という意味だ。だが企業の社会貢献活動やCSRは陰徳にはあたらない。逆に、消費者、株主、従業員など、さまざまなステイクホルダーに向けて、それぞれコミュニケーションを戦略的にもつことが重要だ。いかにステイクホルダーとの信頼関係を構築していくか、企業にとって重要な課題となっている。
7)日本には昔からCSRの発想があった――×
例えば江戸時代から明治にかけて近江商人による「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」がある。欧米の議論を聞かずとも、そもそも日本にもCSRの発想があったのだという指摘があるが、むしろ、そうした商人的規範がなぜ、現代の企業社会に生きてこなかったかを問うことが重要である。どのような企業社会の構造がこれまでCSRを共通の課題と認識させなかったのか、その背景こそが大事である
posted by setsumo at 19:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年年頭所感 これからの日本は「柔」「高」「超」「代」で

日本経済にとって、2000年代は名目GDPが5%減少する
という「縮みの時代」でした。

振り返ると、日本はバブル崩壊以降、国として国民として
目指すべき方向性を失い、ここまで惰性で来ただけでは
なかったでしょうか。すでに「失われた20年」が過ぎて
しまったのです。

誤解を恐れずに言うと、日本のグランドデザインは、
田中角栄元首相の「日本列島改造論」が最後でした。

私たちが「オルタナ」で主張してきた通り、21世紀には新しい
ビジネスのモノサシとともに、新しいグランドデザインが
必要です。

2010年は、21世紀で一つ目のdecade(10年)が終わり、
次のdecadeに向かう年です。

これを機に、日本が目指すべき新しい方向性として
「柔」「高」「超」「代」という言葉を考えてみました。


■「柔」とは柔らかな「モノづくり」
 日本の高度成長を支えた「重厚長大」産業は、中国やインド、
 ブラジルなど巨大中進国との厳しい競争にさらされています。
 日本の競争力を維持するためには、得意なバイオ、ナノテクに加え、
 環境技術、省エネ技術を育成することが不可欠です。
 ゼロエミッション住宅、プラグインハイブリッド車、水素カー、
 高度リサイクル技術など、日本の優位性を生かした製品・サービスを
 さらに育成すべきです。
 
■「高」付加価値の第一次産業
 日本の農業国内生産額は9.5兆円で農業就業人口は311万人
 (いずれも07年度)。かたやパナソニックの連結売上高は9.06
 兆円で、連結従業員数は約29万人。日本の農業の生産性は、
 パナソニックグループの10分の1以下という計算です。
 これでは日本の農業に未来はありません。
 林業、水産業はさらに悲惨です。日本の森林の4割は、間伐も
 されない放置林です。この状況を打破しないと、健全な国土の保全は
 あり得ません。
  
■旧弊を「超」えた制度設計
 今後の日本で最も重要なのは、明確で先進的な環境政策であることは
 以前のオルタナ編集長メールで書きました。
 http://alternaeditor.seesaa.net/article/136477572.html
 ポイントは、環境税(高税率、税制中立)と、
「公共事業のグリーン化」の二つです。
 これまでの箱物・道路というコンクリートと鉄の塊を作り続けるので
 はなく、森林づくり、環境保全という観点から
 新しい形の「グリーンな」公共事業が必要です。その延長線上には
 エコ住宅、エコビレッジという、環境負荷が低い住まいの在り方も
 問われます。

■「代」替の=オルタナティブな
 具体的には自然エネルギー、バイオマス、燃料電池、R水素、水素燃 焼など、特にエネルギーの分野で重要です。オルタナも創刊以来、こ れらのテーマで何度も特集記事を組んできました。
 08年夏のような石油高騰が、再び世界経済に深刻な打撃を与える事態 は、そう遠くない未来にやってくる可能性が高いと考えます。
 代替エネルギーは地球温暖化の問題だけではなく、持続可能性がある 経済社会を考える上で、避けては通れない問題です。


※「柔」「高」「超」「代」という言葉に著作権はありませんので、
この文章に共感頂いた方は、ご自由にご自分の文章やウェブサイト、ブログにお使い頂いて結構です。







posted by setsumo at 18:48| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月30日

社会企業家たちがおおいに叩かれている件に ついて(2)

(1)でご紹介した、東洋経済で社会企業家がおおいに叩かれている件についてのコメントです。

サイバーエージェントの藤田晋さん、元マイクロソフトの成毛眞さん、マネックスの松本大さんに共通するものは、売上高・利益、株価の時価総額など「20世紀のビジネスの価値観」です。

彼らのコメントを読む限り、彼らにとって「社会企業家」「事業による社会問題の解決」「本業としての社会貢献」なる存在は、理解しがたいものであり、自分の価値観の範疇にはないもの――なのでしょう。

それ自体、大いなる不幸ですが、残念ながら、世界や日本の経営者の大半は藤田さんや成毛さんと同じ価値観しか持ち合わせていないのも現状です。

パタゴニアのイヴォン・シュイナードも、ボディショップのアニータ・ロディックも、ウォール街やシティの常識とはかけ離れた存在だったのです。

この現状を打破するには、たった一つの方法しかありません。

それは、ソーシャル(社会的)や、エコロジカル(環境負荷が低い)、グリーンといった「21世紀のビジネスの価値観」で立ち上げた本業を、20世紀の価値観を持った人たちも納得する形で持続させ、発展し、成功することです。

駒崎さんには改めて、前世紀のビジネスの価値観しか持ち得ない不幸な経営者たちからの雑音は気にせず、本業を成功させてほしい――とエールを送りたいと思います。

さらに、世の中にもっともっと社会企業家が増え、社会や市場からの評価を得て、他人に良い影響を与えられるビジネスパーソンが増えることを願ってやみません。

それにしても、藤田さん、成毛さん、松本とも、なぜこれほど厳しいコメントを吐いたでしょうのか。

それは、小学校で、勉強はできないけれど掃除など何か良いことをして、先生に誉められた生徒に対して、成績がトップの優等生が不愉快に思う心理と同じ構図だと思います。

勉強が出来ないくせに、掃除だけで先生に誉められるのは許せない。そんな気持ちがありそうです。

だから、よけい気にする必要はありません(笑)。勉強(本業)も頑張れば、彼らは一目置くようになります。

最後に、もうお気づきかも知れませが、このコメントでは「社会起業家」ではなく、「社会企業家」という表記を使っています。

オルタナの記事でも同じです。

それは、社会に貢献するのは、何も起業家だけではなく、企業家全体であってほしいというオルタナの願いからです。
posted by setsumo at 13:48| 東京 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

社会企業家たちがおおいに叩かれている件に ついて(1)

もう2週間以上のことであり、意見は出し尽くされているのかも知れませんが、どうしても放っておけない議論がありましたので、遅ればせながら参戦します。

それは、
■東洋経済でサイバーエージェント社長らに社会起業家がおおいに叩かれている件について
と題された、フローレンス・駒崎弘樹さんのブログです。

このブログのことは知りませんでしたが、友人の一人から転送され、
内容を知りました。

下記がその内容です。オルタナ森のコメントは
社会企業家たちがおおいに叩かれている件について(2)に書き込みたいと思います。


======================
特集「アラウンド30歳の逆襲」ということで、まさに30歳の僕はコンビニで東洋経済を立ち読みしてみました。

そこにはアクトインディの下元さんや、オリザの小平さんなど、同世代の頑張っていらっしゃる方々が掲載されていて、自分も頑張らなきゃなぁ、ととても刺激を受けました。

しかし読み進めていくと、いわゆるビジネスエリートな方々が、昨今のアラサー世代の「事業に社会性を求める」ことに対してこんなことを仰っているのが目に飛び込んできました。
----------
サイバーエージェント社長 藤田晋 氏
「この世代は社会起業家が増えているというが、その前にすべきことがあると思う。ビル・ゲイツのように死ぬほど稼いで社会に貢献するというなら分かるし、自分もいずれそうありたいと考えるが、経営者として事業を大きくすることが今の目標だ。長く経営者として責任とプレッシャーと闘っている私からすれば、社会起業家はそうしたものから逃げているように見えてしまう。」

元マイクロソフト社長 成毛眞 氏
「もし仮に景気がよければ、社会起業家にはならず、今も外資金融やベンチャーに在籍しているはず。本人たちは、社会起業家としての社会的意義や使命について何ら疑うところはないし、心の底からそれを信じているのだろうが、私に言わせれば経済で先行きが見えないから、別の方面に関心が向かっているだけなのだ。」

マネックスグループCEO 松本大 氏
「厳しいことを言えば、自己の満足という点で、それ(マッキンゼー→ボランティアなキャリアの人)は長続きしないと思う。私は有限なリソースを集中して掘っていくべきだという考えで、自分が決めた仕事や業種に徹底的にこだわって、そこで成果を出そうとする。」
----------------------
僕がITベンチャーの経営を始めた8年前、彼らは「大企業だけが人生じゃない。挑戦しよう。」というメッセージを若者だった僕たちに投げかけてくれていました。まだまだ彼らの会社は小さいものでしたが、それでもそうした前向きな姿勢に僕たちはキラキラと輝くものを見たのでした。

あれから幾年月。あの頃そうしたメッセージを投げかけていた若きリーダー達は、後輩たちが日本社会のために何とか頑張ろう、と挑戦している姿に対して、「逃げている」とダメだしの言葉を投げかけるようになってしまいました。

人間というのはそういうものだ、というのは何となく分かっているつもりですが、それでもあの頃を知る僕としては、ただただ、残念で、哀しい気持ちです。

posted by setsumo at 13:45| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月24日

拝啓 鳩山由紀夫様「混迷の打開には先進的な環境戦略しかない」

鳩山政権発足から100日目の今日、
僕はこんなメールを書きました。

僕は鳩山首相のメールアドレスを知らないので、
もしご存知の方がおられたら転送頂けたら幸いです。



拝啓 鳩山由紀夫様

突然メールを差し上げる非礼をお許し下さい。

きょう12月24日が政権発足からちょうど100日目です。
これに先立って、大手メディアが一斉に世論調査を
行ないましたが、発足直後に比べて、内閣支持率は
軒並み急落しています。

確かに、きょう2人の元秘書が在宅・略式起訴になった
偽装献金問題、普天間基地の移設などの問題では

最近のご表情から察するに、為政者として自信をなく
されているかも知れませんが、その必要は全くありません。

つい3ヶ月前の9月22日を思い出して下さい。

ニューヨークで開かれた国連・気候変動首脳会合での
あなたの「鳩山イニシアチブ――25%削減宣言」に対して、
国連の潘基文事務総長をはじめ、多くの首脳が拍手を
送ったのです。
YouTube 映像 http://www.youtube.com/watch?v=KPXRXDf4jgM

国際的な会合で、日本の首脳の演説がこれほど
喝采を浴びたことなど、私の記憶にはありません。

小誌オルタナでも、最新16号で「グリーン革命が
やって来た」と題して、鳩山イニシアチブの下で
日本の経済社会が「グリーン」に変わっていくという
特集記事を、期待を込めて書きました。

25%削減に反対している企業が多い経済界からも、
桜井正光・経済同友会代表幹事を始めとして、
鳩山イニシアチブを評価する声が出てきました。

そのわずか3カ月後、政権運営がこれほど揺らぐとは
鳩山さんは想像もされなかったことでしょう。

この混迷を打破できるのは、
先進的で、力強い環境政策しかありえません。

鳩山さんは、ガソリン暫定税率廃止の棚上げに
抵抗を示されたようですが、国民の過半は、
ガソリンが安くなることを望んでいる訳ではありません。

(下記、読売新聞の世論調査)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091219-OYT1T01242.htm

むしろ、来年の4月という絶好のタイミングに、
環境税(炭素税)を導入して欲しかった。

それも、11月に発表された環境省案では税率が低すぎます。
環境省案の税率は、総じて欧州先進国の6―10分の1の
水準です。

これでは、頑張った家庭や企業が報われ、頑張らない
場合には高い税金が課されるという、環境税本来の機能は
働かないと専門家は見ています。

さらに、環境税は「税収中立」として機能させ、欧州のように
年金や福祉に税収を充てれば、低所得者対策にもなります。
(手前味噌ですが、オルタナ11号「環境税は怖くない」で
欧州の事情を詳報しています)

このほか、自然エネルギーの導入促進、FIT(固定価格
買い取り制度)の拡大、環境技術の開発支援、スマートグリッド、
公共事業のグリーン化、税制のグリーン化など、枚挙に暇が
ありません。

これらの環境政策は、エネルギー政策を中心にした、
今後の長期的な国づくりに他なりません。

昨年、化石燃料が急騰して世界経済に大きな打撃を与え
ましたが、再騰する時期は意外に近いとの見方もあります。

オバマ大統領も欧州の首脳たちも、
とっくに「脱石油」の道を歩み始めています。

そして最後に、つい3ヶ月前、
多くの市民やNPO/NGOも
「鳩山イニシアチブ」に声援を送ったことも、
どうかお忘れにならないで下さい。

日本の国民は、鳩山さんが想像している以上に
環境意識が高いのです。

先進的な環境政策は、日本の競争力を高め、
今後の成長の礎(いしずえ)になります。

それはマイケル・ポーターや
トーマス・フリードマンの言を待ちません。

どうか力強い環境政策を、自信を持って
断行されるよう、心からお願い申し上げます。

オルタナ編集長
森 摂







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